額安寺の境内にひっそりと佇む額田部北町の五輪塔群は、鎌倉時代後期に造立された石造りの芸術品です。国指定の重要文化財に指定されているこの9基の五輪塔は、永い年月を経ても色あせることのない美しさを湛えています。
入り口から一直線に並ぶ九つの五輪塔の姿は、まるで時の隙間から覗く過去の風景のようです。右端から8基が国指定の重要文化財で、一番左の大きな五輪塔は忍性のものと言われています。
どの塔も細部にまでこだわりが凝縮された緻密な造形美を誇り、築造当時の匠の技を今に伝えています。苔むした塔身に刻まれた紋様を眺めながら、鎌倉武士の時代を彷彿とさせる風情に思いをはせてみてはいかがでしょうか。
額田部北町の閑静な住宅街に佇む五輪塔群は、まるで時が止まったかのような幽玄の雰囲気に包まれています。ふと耳を澄ますと、遠くから聞こえてくる小鳥の囀りが、この地の古里の面影を伝えてくれるかのようです。
一日の喧騒を忘れて、塔々の佇まいに思いを巡らせてみましょう。かつて鎌倉武士が手を合わせ、祈りを捧げたのと同じ場所に立つ感動は、きっと日常とは異なる新鮮な体験となるに違いありません。