奈良県の田原本町に構える「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」は、300年を超える歴史を誇る老舗の醤油蔵である。大和路の原風景に抱かれたこの宿は、伝統の技と現代的な感覚が見事に融合した空間だ。
改修された醤油蔵の2階には、木の温かみを感じる客室が並ぶ。間接照明が優しく灯り、落ち着いた雰囲気に包まれる。テレビはないが、それがかえって心を静めてくれる。檜風呂の柔らかな木の香りとともにゆっくりと寛ぐことができるだろう。
夕食は、奈良県産の厳選された食材と蔵元の醤油が織りなす絶品の味わい。薬味を控えめにすることで、素材本来の旨味を最大限に引き出している。朝食でも、地元の新鮮な卵や野菜を使った品々に出会える。一品一品に宿主の心遣いが感じられる。
敷地内には、天然記念物に指定されている森があり、木々の間から太陽の光が射す。宿主の案内で周辺を散策すれば、村の祠や大和三山の眺望を楽しめる。奈良の地に根付く文化や伝統に思いを馳せる機会ともなるだろう。
まさに味わい深い古都の情緒に触れられる宿である。素朴ながらも上質な空間とおもてなしに、心が潤うに違いない。