草々とした寺院に佇む、瀬戸内の隠れ里
波穏やかな瀬戸内海を臨む法然寺。木々の梢からこぼれる陽射しが、ずっと昔からそこに在り続けた寺院に穏やかな光を投げかけています。参道を進むと、青々とした苔が覆う境内が広がり、その奥には本堂が控えています。
江戸時代の豪商である葛西家の菩提寺でもある由緒ある寺院。境内には代々の葛西家の墓が置かれ、名門の気品を伺わせます。しかし、そこには時の経過とともに朽ちゆく儚さも感じられます。
参拝者は少なく、ほとんど足音すら聞こえない閑寂な境内。そこはあたかも時が止まったかのようです。名刹を思わせる風格はありながらも、どこか馴染みの空気が漂っています。住職の人懐っこい人柄も、そんな雰囲気を醸し出しているのかもしれません。
4月の桜の季節には、寺域に舞う花びらの中を歩くことができます。舞い落ちる一枚一枚の花びらが、何百年もの時を経た景色に、一期一会の風情をもたらしてくれます。
この小さな寺院には、潮風に吹かれた入り江の村の歴史と、人々の暮らしの匂いが染み付いているのです。ひとときの静寂に身を委ねることで、現代とはまた違った趣の世界を体感できることでしょう。