京都市内でも由緒ある太秦地区。その一角に佇むのが、大酒神社です。この神社は、渡来系の豪族・秦氏が祀った氏神様を今に伝えています。主祭神は、秦の始皇帝をはじめ、弓月王、秦酒公と、中国の歴史に深く関わる方々です。
日本にある神社で、秦の始皇帝を祀るなんて不思議な感じがしますね。実は、広隆寺の由緒書きによると、始皇帝の子孫が日本に渡来し、この地で氏神を勧請したと伝えられています。真偽のほどは分かりませんが、古くから太秦一帯を開発した秦氏の氏神であったことは間違いありません。
境内に足を踏み入れると、簡素な造りの本殿が目に入ります。拝殿はなく、本殿両脇に灯籠が建つだけの質素な様子です。しかし、そこには長い歴史の重みを感じずにはいられません。かつては「奇祭」と呼ばれる祭事が行われていたそうですが、いまではその理由すら闇の中に残されています。
時代の流れと共に変容していく神社の姿に、私たちはまたしても歴史の奥深さを思い知らされることでしょう。大酒神社を訪れれば、京都ならではの味わい深い雰囲気に触れられるはずです。