渋谷という喧騒の中心地で、ひっそりと佇む鶏白湯専門店がある。その名も「麺屋武一 初台店」。狭い路地に入ると、思わぬ広さの店内に驚かされる。出迎えてくれるのは、比類なき鶏の香りだ。
麺屋武一は、鶏に対するこだわりが異常なほど強い。使う鶏は国産の銘柄鶏に限られ、しかも一般的な鶏肉ではなく、希少で高価な地鶏のみを使用する。比内地鶏や淡路島ロマンを筆頭に、青森県の桜小町鶏、奈良県の祥雲ロマン鶏など、血統書つきの名鶏の旨みを余すところなく抽出している。
鶏を丸ごと捌き、骨までカミカミと噛み砕き、時間をかけて旨みを収穫するこの方法は、麺屋武一の前身である「麺や武蔵」が生んだ技術。その伝統が受け継がれ、守り抜かれてきた。老舗の味にも似つつ、新進気鋭の店らしい斬新さも合わせ持つのが武一流だ。
初台店ではラーメンはもちろん、つけ麺や混ぜ麺など豊富なメニューを揃えている。京鰹節と比内地鶏の中華そばは、鶏出汁に磯の香りが絶妙にマリアージュしたひと品。店主の高みへ届く腕前が窺える一杯だ。少しだけユーモアを交えながら、しっかりと説得力のある味わいを堪能してほしい。