有馬温泉は、日本有数の名湯として知られる温泉地です。その中心に位置する温泉寺は、奈良時代から温泉で人々を癒してきた由緒ある寺院です。参拝すれば、温泉に秘められた魅力に思わず浸ることでしょう。
温泉寺の本尊は薬師如来。724年に行基上人が開山したと伝えられ、病気治癒の力を持つ薬師如来を祀って温泉の恩恵を広めようと願われました。境内には波夷羅大将立像や毘沙門天立像など、重要文化財にも指定された貴重な仏像が安置されています。
中世に一度は衰退した有馬温泉を、仁西上人が復興させました。薬師如来の十二神将にちなみ、十二の宿坊が置かれたそうです。石段の参道を上がれば、鐘楼や飛び出し坊主など情緒豊かな風景が広がります。夜の燈りともなれば、一層幻想的な雰囲気に包まれます。
1月2日の「入初式」は、温泉寺ならではの風物詩です。湯屋から運ばれた温泉の初湯で、僧侶が仏像に淋浴をしめす儀式が執り行われます。町の人々にとっても、新年の無病息災を祈る大切な行事なのです。
温泉寺を訪れれば、温泉と仏教文化が融合した有馬温泉の原風景に出合えます。遠く古代から続く湯治の地の祥福に浸り、心身共にリフレッシュできることでしょう。