奈良県橿原市の橿原神宮境内に佇む「文華殿」は、かつて天理市に存在した織田家の大名屋敷です。重要文化財に指定されたこの建造物は、江戸時代の武家文化を今に伝える貴重な遺産です。
正面の立派な書院は、絢爛たる絵画で彩られています。その細やかな意匠は見る者を圧倒します。内部に足を踏み入れると、豪壮な造りに加え、書院や広間の装飾に武家の気品が漂います。大名の館にふさわしい荘厳な佇まいが目に浮かびます。
現在の文華殿は、御所の町・天理から橿原神宮の境内に移築されたものです。この大名屋敷の元々の場所は、織田信長の弟・織田有楽斎の5男を祖とする柳本藩の本拠地でした。時代の流れとともに命運を変えながらも、建物の姿を残し続けた不思議な運命があります。
武家の館に欠かせないのが、緩やかな坂道と回遊式の廻り庭園です。四季折々の景色と、枯山水の景石が織りなす借景の美しさは、格別の風情をもたらします。たとえ一時も足を止め、日本庭園の心安らぐひとときを体感してみてはいかがでしょうか。
修理のため現在閉鎖中ですが、令和8年の完了を機に一般公開される予定です。江戸時代の大名屋敷が現存するのは極めて貴重です。ぜひ武家の粋を堪能し、時を超えた気品に触れてください。