春日居は、山梨県笛吹市に位置する小さな集落です。しかし、その歴史は遥か古代にさかのぼります。この地には、かつて甲斐の国を治めた有力な氏族が居を構えていたと言われています。時を経て、その古きロマンは風化することなく今に伝わり、訪れる人々を別世界へと誘います。
春日居を歩けば、あちらこちらに古民家が点在しているのが分かります。それらの多くは、江戸時代から明治にかけて建てられたものです。屋根は手摺り付きの入母屋造り、白壁に格子窓という典型的な作りで、日本の原風景を彷彿とさせます。
中には、現代の生活様式に合わせて改装された家屋もありますが、そうした家々でさえ外観は昔ながらの佇まいを残しています。訪れる人は、まるで時空を超えたかのような非日常を味わえるでしょう。
春日居の人々は、先人から受け継がれた伝統行事を現在でも大切に守り続けています。なかでも象徴的なのが、毎年7月に行われる「エマ」という夏祭りです。これは古代の農耕文化に由来する祭りで、豊作を祈る形跡が今に残されています。
多くの祭り囃子が奉納されるなか、最大のハイライトは夜の神事です。炎の精霊(ヒサギ)と呼ばれる火焔が、静かな夜の里に舞い踊ります。勇壮かつ荘厳なその光景は、まさに時空を超越した体験と言えるでしょう。
春日居には、珍しい名物グルメがあります。それが「甲斐ちくわ」です。これは、小麦粉の生地に甲斐路の郷土料理を詰めた、見たことのない不思議な食べ物です。素朴ながらも、味わいは絶品。古民家を営む宿では、この「甲斐ちくわ」を軸に、様々な趣向を凝らした料理が提供されています。
春日居に足を運べば、貴重な歴史的風情に触れるだけでなく、新鮮な食の発見もできるはずです。日常を離れた、別世界の体験を求める人には最適の旅先と言えそうです。