埼玉県大里郡寄居町に佇む正龍寺は、戦国時代の面影を今に伝える貴重な寺院です。曹洞宗の寺院として知られるこの寺は、高根山藤源院という別名も持ち、その歴史は花園城主・藤田五郎政行にまで遡ります。
正龍寺の名前には、興味深い逸話が隠されています。1187年、城下に青龍が出現し龍泉の湖を作ったという伝説から、1348年に青龍寺と名付けられました。その後、昌龍寺を経て、1591年徳川家康の時代に現在の正龍寺という寺号に落ち着いたのです。
寺院の境内には、歴史的に重要な人物の墓所が点在しています。特筆すべきは、15代城主藤田康邦夫妻や鉢形城主北条氏邦夫妻の墓です。これらの墓所は、戦国時代の権力者たちの足跡を今に伝える貴重な史跡となっています。
正龍寺の魅力は歴史だけではありません。境内には、埼玉県の天然記念物に指定されている「玉垂の楓」と呼ばれる名木があります。春の新緑、秋の紅葉と、四季折々の美しさを楽しむことができるのも、この寺の魅力の一つです。
正龍寺の山門は、訪れる人々を圧倒する迫力があります。特に、金剛力士像の生々しさは見る者の心に強く印象付けられます。この山門をくぐると、まるで時代を超えて戦国の世界に足を踏み入れたかのような錯覚を覚えるでしょう。
正龍寺は、埼玉県大里郡寄居町藤田101-1に位置しています。公共交通機関でのアクセスは少し不便ですが、車で訪れるのがおすすめです。近くには他の史跡や自然スポットもあるので、周辺の観光と合わせて訪れるのもよいでしょう。
静かな佇まいの中に、荘厳な雰囲気と深い歴史を秘めた正龍寺。戦国時代の息吹を感じながら、心静かに過ごせる特別な場所です。歴史好きの方はもちろん、静寂な時間を求める方にもおすすめの聖地と言えるでしょう。