嵯峨野は京都を代表する観光地のひとつですが、人気の高い名所に加えて、まだあまり知られていない素晴らしい場所も点在しています。今回は、そんな京都の隠れた名所、「湯豆腐嵯峨野の石塔群」をご紹介します。
京都の西北部、嵐山から車で10分ほど入ったところにある「湯豆腐嵯峨野」。この小さな集落の中に、石塔が無数に立ち並ぶ不思議な場所があります。周囲を緑深い山々に囲まれ、一歩足を踏み入れると、まるで時が止まったかのような静寂の世界が広がっています。
この石塔群は、江戸時代に入ってからこの地に住み着いた人々が、先祖供養のために次々と建て立てたものです。400年以上の時を経て、現在では700基を超える石仏が集まる、京都でも有数の供養の地となっています。
石像ひとつひとつに深い精神性が宿っているのを感じられるでしょう。荘厳な表情から温和な微笑み、時に滲み出るような哀しみまで、彫刻の細部にはそれぞれの魂が刻まれているようです。長い年月を経て自然と一体化した石塔は、生と死の境地に立つ人間の心を写し取っているかのようです。
石塔群を散策するときは、その佇まいに思わず見とれてしまうことでしょう。静かな環境の中で心ゆくまで鑑賞できる贅沢な時間は、嵯峨野ならではの醍醐味です。石仏を前に、人生の有限性と永遠の輪廻について想いを馳せるのもよいかもしれません。
湯豆腐嵯峨野の石塔群は、嵐電嵐山駅からタクシーで10分ほどの場所にあります。京都駅からは市バス(207系統)で約40分と、アクセスも比較的便利です。敷地内は傾斜があり、石畳の道が続くため、歩きやすい靴でお越しください。
京都には世界遺産にも数えられる名所がありますが、こうした静かな場所も魅力の一つです。湯豆腐嵯峨野の石塔群に足を運び、京都の深い歴史と文化に思いをはせてみてはいかがでしょうか。