岐阜県羽島市の国道沿いに、一つの石造りの灯台が佇んでいる。この「起渡船場石灯台」は、江戸時代に木曽川の渡し場から竹鼻に向かう街道の夜間の案内役として建てられた。その昔、橋もない時代に川を渡る人々の命綱としての役割を果たしてきたのだ。
川沿いの道路の中央分離帯に置かれた石灯台は、現代の車社会にあっても存在感を放っている。かつての渡し場から遥か離れた場所に移設されながらも、その力強い佇まいは当時の姿をしっかりと伝えている。
朝の渋滞の中でもひっそりと灯をともし続ける石造りの道しるべ。昔と変わらぬその姿は、まるで時空を越えた存在のようである。
時代は移り変わり、川の渡し場も橋に置き換えられた。しかし、この石灯台だけは当時の面影を残している。堤防の工事で現在の場所に移されたことから、道路の真只中で孤立無援の姿となってしまった。
それでも、この石の語り部は昔日の物語を伝え続ける。橋もない時代の人々の悩ましい表情、そして川の流れの音が今なお心に残る。時代と共に変わりゆく街並みの中で、ひとり寂しく佇む石灯台は、かつての賑わいを知る最後の生き証人なのかもしれない。
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