秩父の山々に抱かれた静かな町並みの中、国道沿いに佇む神門寺。秩父三十四観音霊場の第18番札所として知られるこのお寺には、長い歴史と豊かな伝説が息づいています。
神門寺の起源は遠く神社の時代にまで遡ります。かつてこの地に鎮座していた神社の境内には、大きな榊の木が絡み合って自然の楼門を形作っていたといいます。この神秘的な光景から「神門」の名が付いたとされています。
しかし、榊が枯れてしまった後の神託により、観世音菩薩を安置する寺院として生まれ変わりました。江戸時代には修験道の道場として栄え、明治維新後に現在の神門寺となったのです。
神門寺の見どころの一つが、秩父の名匠によって天保年間に再建された本堂です。異様に大きな屋根の張り出しが特徴的で、コンパクトながらも重厚な印象を与えています。扉が開放されているため、内部の荘厳な雰囲気も存分に味わえます。
境内には本堂の他にも、不動堂や蓮花堂など趣のある建物が並んでいます。特に注目したいのが回廊内に安置された仏像群。寄贈されたこれらの仏像は、見応え十分の芸術作品です。
また、本堂の裏には観音様との「お手綱」があります。これに触れることで、観音様とのご縁が深まるとされ、参拝者の人気を集めています。
神門寺は秩父市街地にあり、秩父鉄道御花畑駅から徒歩で約20分。前の札所である17番から歩いて訪れる巡礼者も多く見られます。
拝観料は無料で、休憩所やトイレも完備。秩父三十四観音巡礼の途中でゆっくりと休憩するのにも最適です。
歴史ある建築物と仏像、そして静かな境内の雰囲気。神門寺は、秩父の文化と信仰の深さを感じられる貴重なスポットです。秩父観光の際には、ぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。