秩父の山々に囲まれた静かな丘の中腹に佇む常泉寺。秩父三十四観音霊場の第3番札所として知られるこの寺院は、訪れる人々に心の安らぎと深い歴史の息吹を感じさせてくれます。
常泉寺の魅力は、その歴史的な建築にあります。1858年に再建された本堂は、江戸時代後期の建築様式を今に伝えています。特筆すべきは本堂左手の観音堂。明治3年(1870年)に秩父神社境内から移築されたこの建物には、息を呑むほど美しい海老虹梁の龍の籠彫りが施されています。建築好きの方なら、その精緻な技巧に心奪われることでしょう。
常泉寺には、訪れる人々の願いを聞き届ける2つの宝があります。
子持石: 本堂に安置されている寺宝の一つ。妊娠中の女性を思わせる形をした石で、子宝に恵まれたい人々の願掛けスポットとして知られています。
長命水: 本堂手前左にある井戸の水は、万病に効くと伝えられています。かつて病に伏せった住職がこの水を飲んで回復したという言い伝えから、長命水と呼ばれるようになりました。
常泉寺の魅力は寺院だけにとどまりません。境内から眺める山々と田園風景は、まさに日本の原風景そのもの。都会の喧騒を忘れ、ゆったりとした時間の流れを感じることができます。
常泉寺は、単なる観光地ではありません。悠久の歴史、美しい建築、そして心温まる言い伝えが織りなす、魂の癒しの場所なのです。秩父を訪れた際は、ぜひこの隠れた宝石のような寺院で、心静かなひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。